イケず旅暮らし vol.3<村上大輔>「あの団地で誘拐事件があったらしい」 皆様の中に団地で育った方はいるだろうか。もしいたとしたら、気分を害さないで読んでほしいと思う。偏見と、愛着に満ちた団地の話。 昔から僕は団地というものが怖かった。あの場所には外とは違った異様な雰囲気を感じてしまう。ずらりと立ち並んだコンクリートの塊のような建物はどれも無表情で、端っこに小さく書かれた番号でその区別がされている。入り口は小さく、そこから上っていく階段も暗い。一つ所に集められた郵便受けは鈍い色の金属で、なんとなくホコリっぽい。最近の団地事情に詳しいわけではないが、いまだにそんなイメージをぬぐえないでいる。 どことなく排他的なのも苦手である要因の一つである。敷地内には申し訳程度の砂場...28Mar2018vol.3イケず旅暮らし
先っぽだけがいいから vol.1<コイデシュンペイ>『ZINEを作るんだけど、ダン肉も何か書いてくれない?』 長野で産まれて二七年とちょっと、東京で暮らし始めて10年そこそこ、色々な人間に出会ってきたのだけれど、いつだって最高だなって思う奴は突然何かをやろうとしだして、それをしっかりと実行する人間だなあ、なんて思っている。 ボノD ( 小野雄大) にそんな依頼を受けて、いいよ!なんて安請け合いしたのが去年の一一月くらいだった気がするのだけれど、結果年の明けた今もこうしてダラダラと書いているのだから、改めて俺は文章を書くのが苦手なんだなあと実感した。早漏のくせに遅筆だなんて救いようがない。『それでまた、なんで俺なんかに依頼を?』当然である。普段から約140文字の戦場で戦ってはいるけれど...28Mar2018先っぽだけがいいからvol.3
くいしんぼうばんざい vol.1<小籠包> 人にはそれぞれお気に入りのお店があるのではないかと私は思う。誰かに教えたくなるお店や誰にも教えたくないお店。お気に入り、イコールよく通い詰めるお店、いわゆる「常連」でなくてはならないなんてことはない。そう思っている。その人が初めてそこに足を踏み入れた瞬間にはっと感じる何か。はたまた、気が付いたら勝手に何度も足を運んでしまう何か。落ち着く。癒される。店員さんの表情や店内の雰囲気。会話。味。匂い。音。色。その何かは、その人の感じるその人なりの感じ方であって、きっと他人にはわからない。誰かにわかって欲しくて誰かに話したくてたまらなくもあり、自分だけで楽しみたい気持ちでもある。この感情は挙げ出したらきりがない。きりがないというより言い表せ...28Mar2018vol.3くいしんぼうばんざい
毎日ボーナスタイム vol.3<みうらかな> 二月になる。「ドラゴンフルーツ」という斬新なタイトルのZINE に、「毎日ボーナスタイム」という何ともテキトーでふぬけた連載を持ちはじめて三ヶ月が経った(内容はいたって真面目である)。 執筆の相談を受けたとき、小野さんからの指令が「ライブハウスについて書いてほしい」だったこともあり、前回まではライブハウスで働くことになったきっかけなど、基本的に自分にまつわるあれこれを書いてきた。けれど自己紹介が苦手で、しかも普段読書をまったくしない私にとって、" 己と向き合う" という底知れぬ気まずさとの戦いはかなり深刻なものであった。 そうやって何度も吐きそうになりながら、夜中の自由が丘のベンチで書き上げた前作を読み返すと、やっぱりひどいな、と...21Mar2018vol.3毎日ボーナスタイム
なつたろうの思い出 vol.3<藤岡なつゆ>「犬を飼いたい」 人生一度は、「猫派?犬派?」という二択に迫られることがあるが、なぜだろうか。個人的見解と統計によると世の中その割合は五:五くらいに感じるが、猫派の方が猫のみに固執しており、一方で、犬派の方はそう言いつつも、わりと猫も好きだし、むしろ動物全般が好きだったりする。ちなみに、私は犬派である。 私の実家は大変な田舎にあり、近所の人はみんな知っている顔だし、その家にどんな動物がいるかもたいてい知っていた。中でも犬は多かった。 坂の下のきみこさんちはジョン(洋犬との雑種で耳が垂れ、茶色いぶち模様)、かすみちゃんちはチコ(凶暴な雑種)、その隣のかーくんちは白い雑種のミッキー、そのまた隣のひーちゃんちは、シェットランド・シープドッ...21Mar2018vol.3なつたろうの思い出話
雑念エンタテイメント vol.3<もーにんぐしー>「地獄でなぜ悪い」 皆さんが思い浮かべる「編集者」ってどういう感じだろうか。多くの人は「原稿を書く」という動作を思い浮かべる。真夜中にスタンドライトの下、頭を搔きむしりながら推敲を重ね、朝方にやっと完成させた渾身の原稿を、エンターキー思いっきし叩いて送信する。そしてそのまま倒れこむ。映画やドラマでよく見る感じだ。 ちょうど一年前の今頃。私は雑誌編集の仕事をしていた。半年ちょっとの短い期間ではあったが、その頃の生活といえば朝8時には出社して12時間は会社で仕事。校了が近づいてきたら食事せず仕事(何か食べると頭がにぶるから)。どんな生活の合間でも書ける原稿があったら書く。バンドでのフェス出演の前に車で原稿作成。遠征先の楽屋で校正。宿泊先...14Mar2018雑念エンタテイメントvol.3
上沼優二郎(FOOLA)の 感受性、応答セヨ! vol.3<上沼優二郎>皆さんは異性に一目惚れをしたコトはあるだろうか?ワタシは二度あります。一回目は中学一年生の入学式の日、二回目は三〇歳を越えた八年前だ。数々の恋を経てこんなことがまだ起きるのかとびっくりしたのを憶えている。かわいいなとか今夜なんとかお持ち帰りしたいとかそんなんじゃない。ビビビッと来たって言ったのは松田聖子だっけ?本当にそんな感じで、一瞬で骨抜きになるっていうか。細胞が抗えない感じ。話した事もないしどんな人かも分からないのに。しかし当時のワタシは彼女がいた。が、もう気になって気になってしょうがない。顔も声も話し方も立ち振る舞いも完璧。だけど彼女の事を考え、その日は何回か軽く話しただけで別れた。連絡先も聞かなかった。それから毎日その娘の事...14Mar2018vol.3上沼優二郎(FOOLA)の 感受性、応答セヨ!
散歩する、素晴らしき哉、おいしい生活 vlo.3<umihayato> さて、新年も明け、 この記事が載ってるのが二月のものなので、これを書いている元旦二五時。1ヶ月ほどのタイムラグがある。 一月のものにある記事を書いたのがおよそ一週間前くらいなの で、僕としては一週間ぶり、読む人にしたら一ヶ月ぶり。 この時間のズレも面白いなぁと思う。 さて、暇である。2017年、数えてみたところ記録してあるだけでも162本の映 画を見ていた。約2.2日に一本。その実、週末何もない日が来ると朝から起きて一本、朝飯か昼飯かわからない飯を食いながら一本、サウナに行って帰ってきて酒とつまみで一本、夜飯を食いながら一本、一二時回って寝る前に一本。こんな感じで映画を見ている。 これは誰にも共感してもらったことがないが、映画を見...07Mar2018vol.3散歩する、素晴らしき哉、おいしい生活