上沼優二郎(FOOLA)の 感受性、応答セヨ! vol.4<上沼優二郎>

足るを知るという事。

ワタシももう三八歳といい年ですしムスコくんもいますし価値観というか考え方というのが最近は色々変わってきまして。もちろんいい意味で。必要以上を求めるから色んなことが歪んじゃうのかなって最近はよく思います。

お恥ずかしながらワタシは二八歳の頃、二年間くらい家がなくてですね。と言うのもですね、当時は同棲をしていた女性がいたのですが他に好きな女性が出来てしまい別れ話をしたんです。深夜から朝方までかけて。で、相手の方が納得というか別れを受け入れてくれて、その後にこう言ったんです。

「荷物どうする?」

そうです。その家は同棲していたとは言え、お相手の女性の家だったのです。そこら辺の事をすっかり忘れていたワタシは内心もの凄く慌てましたが、慌てていることがバレたらカッコ悪いと思い(この時点で既にカッコ悪い) さらっと、パパッと全部持って行くよと言いまして。

もちろんその算段もなく、車の免許は運転しないがゆえに永遠にゴールドなワタシはひとまずその足で持てるだけの荷物を持ってタクシーに乗り込み、前職であるキノトの事務所に行き、そこから二年間住んでおりました。

キノト事務所に来た事がある方は分かるかと思いますがあのデカい黒いソファ、あれがワタシの寝床でした。とは言えそこはワタシもロックバンドの端くれ、なのでまぁ言わずもがなですが色んな女性…もごもご

ここから先はご想像にお任せします。

毎日食べていける為の仕事があって、毎日着る服があって、住む家があって。家族も友達もいて。たくさんの素晴らしい音楽を知っていて、自分でも音楽を作ってステージで演奏して。

毎日ビールが飲める健康な身体があって。自分の子供もいて。

無い物をねだるより必要な物を大事に。足りないものはない。

ディズニーランドより小さなライブハウスがいい。高級レストランのディナーより小さな居酒屋でいいな。そこにレバ刺しがあればそれで幸せ。

どんなにモノを手に入れたって、どれだけお金があったって金ピカのハートは手に入らないのです。


文:上沼優二郎